何となく「ズボラ感」があって、おいしくなさそう――。そんな思い込みから、料理研究家の山脇りこさんはほとんど電子レンジを使ってきませんでした。変わったきっかけは、母でした。
10年ほど前だったか。料理上手の母は、70代半ばくらいから「料理が思うようにできない。今までの倍時間がかかる」と言うようになった。
80代になったある日、「最近は料理が毎日できなくて、火もちょっと怖くなった。あなたにも作ってあげたいのに」と目に涙をいっぱいためていたことがあった。
ハンバーグやナスの煮浸し、スペアリブ。母が作るものは全部おいしかった。冷凍食品は一切使わず、全て手作り。毎年お正月前には、12月20日くらいから「鶴の恩返し」のように台所にこもっておせちを作っていたのに……。
どんなに料理が好きでも、老いれば、台所に長時間立つことや火を扱うことが難しくなる時がくると痛感した。
「いいんだよ、お総菜を買っ…