瀬戸内海に面した香川県多度津町は、かつて海陸の交通の要衝として栄えた港町だ。
その栄華を伝える邸宅、旧合田家住宅(合田邸)で緊急保全工事が本格化している。だが、町長が事業費を一般財源から出さないと表明し、今後の保全計画が定まらない状況になっている。
黒いなまこ壁や瓦屋根の家が並ぶ本通1丁目の一角。JR多度津駅から徒歩10分ほどの合田邸は、1895(明治28)年から1934(昭和9)年ごろに順次増築された和洋の木造建築を中心とする主屋と大広間、離れ、洋館、店舗などで構成される。
町教育委員会によると、合田家は、明治から昭和にかけて豪商、事業家、政治家として栄えた。建物は2020年に所有者から町に寄付され、翌年に町有形文化財となった。
屋根からの雨漏りや柱のシロアリの被害がひどく、町教委は21年度から国の交付金を受け、約2400万円をかけて主屋、大広間の屋根瓦を外して仮設のトタン張りにし、建物にかかる荷重を軽減するなどの緊急工事を実施した。
23~27年度に6550万円を投じて緊急保全工事を進める計画も策定し、町ホームページに掲載した。
だが、丸尾幸雄町長(74)は昨年3月の町議会で「合田邸の保全に一般財源は使わない」と答弁した。
記事の後半では、地元有数の歴史建造物保全に、町税などを使わない理由を町長に聞きました。人口減が進む地域社会の共通の悩みが浮かびました。
これを受け、町教委は企業版…