1300年もの間、守り伝えられてきた奈良・正倉院の宝物。その修理でこの60年、接着剤や補強材として新たに使われ始めたのが「合成樹脂」だ。宮内庁正倉院事務所の片岡真純さん(41)は、その使用の履歴をたどり、今春刊行された「正倉院紀要」で発表した。
漆や膠(にかわ)など、古くから使われてきた樹脂や接着剤に比べて、合成樹脂の歴史はまだ浅いが、アフターケアのためにも、どの宝物にどんな樹脂が使われたかを把握することが重要になる。そのため、所内の様々な資料に散らばっている修理の情報を集めて、一覧化する作業を約10年続けてきた。
「私が研究している『染織(織物・染め物)』の修理には、合成樹脂はこれまで使われていません。使われたのは主に立体的な『器物』で、専門外なのですが……」
京都市立芸大で染織を学んだ…