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大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で、主人公の蔦屋重三郎を演じる横浜流星さん=NHK提供
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 江戸の民衆文化を花開かせた出版人・蔦屋重三郎を描く、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」(日曜夜8時)が、始まった。脚本は、「JIN-仁-」などを手掛けた森下佳子さんが担当する。「江戸のメディア王」となる蔦重をどう描くのか。森下さんに聞いた。

 「(手塚治虫らマンガ家たちが若手時代に暮らした)トキワ荘のような大河ドラマを作れないか」

 2023年春ごろ、NHK側からそんな話が持ちかけられ、蔦重を題材にすることが提案された。

 「蔦重を全く知らなかったわけじゃなかったんです。かつて、美術館で企画展を見たことを思い出しました。『面白いことをしているな』『映画にする人がいそうだな』というのが率直な感想でした」

 1年を通して、どのように描けばいいのか考え、喜多川歌麿、東洲斎写楽らの数々の作品を送り出した蔦重を調べていった。

 「蔦重は、漫画やアニメといった日本が世界に誇るポップカルチャーの祖ともいえる。今書くべきテーマで、その生涯には1年かける価値があると思いました」

 そして、17年の「おんな城主 直虎」に続く、大河の執筆が始まったという。

  • 横浜流星、江戸のメディア王「蔦重」を演じる覚悟 大河「べらぼう」

 タイトルの「べらぼう」は、人をののしる「ばか」「あほう」のほか、「普通を超える」という意味も持つ。

 「蔦屋重三郎の生きざまを表す言葉だったんじゃないかなって。最初は『あほうなお前にできるか』と言われていた人物が、ポジティブな評価に変わっていくようなイメージですかね」

 サブタイトルの「蔦重栄華乃夢噺」もメインタイトルの候補だったという。

 「(恋川春町作・画の)黄表紙『金々先生栄花夢』から連想して『蔦重栄華乃夢噺』も良いかもねなんて、話もありました。結局はキャッチーな『べらぼう』を選びました」

 主役の蔦重を演じる横浜流星さんには「(他の作品では)内に熱を込めたキャラクターを演じる機会が多かった気がするので、今回は明るくパワフルな芝居が見たい」と期待する。

 語りだけでなく、遊郭・吉原を見守る神様「九郎助稲荷(くろすけいなり)」としても出演する綾瀬はるかさんの起用は自らのリクエストだったという。

 「JIN-仁-」や「義母と娘のブルース」など数々の作品でタッグを組んできた綾瀬さんが語りを務めることについて、「声が耳にスッと入ってきて聞きやすい」と評する。今作は江戸や吉原の文化を説明する場面が多いことから、「親しみのある声の人がいい」と起用の狙いを話した。

「写楽の正体よりも描きたいことを最大の謎に」

 蔦重は、吉原のガイドブック「吉原細見」を手がけた人物としても知られ、12日の放送でも、この話題が取り上げられる。

 森下自身も脚本家になる前…

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