横浜市の70歳以上の市民が路線バスや市営地下鉄を利用するときに使う「敬老パス」について、市が検討している見直し案の概要が11日、関係者への取材でわかった。鉄道やバスのアクセスが悪い地域で運行する乗り合いタクシーやコミュニティーバスといった「地域交通」への支援を拡充し、敬老パスによる優遇の対象にするのが柱だ。
敬老パス(敬老特別乗車証)は、収入などに応じて最大年2万500円の負担金を払えば、バスや地下鉄などが乗り放題になる仕組み。
山中竹春市長は2021年の前回市長選で公約に「三つのゼロ」を掲げた。このうち、中学生以下の医療費や出産費用の無償化はほぼ実現のめどが立ち、残るは「敬老パス自己負担ゼロ(75歳以上)」だけになっていた。
地域交通の充実を優先
ただ、敬老パスは今年9月時点で対象となる約80万人のうち約41万人(約51%)が交付を受けており、自己負担ゼロには年数十億円の財源が必要との試算も出ていた。
加えて、利用状況を分析したところ、交付率や利用回数は区によって差があることも判明した。特に、駅やバス停から遠いエリアほど利用が少ない傾向にあり、公平性を担保するために、まずは地域交通の充実を優先することにしたという。
今回、市がまとめた案では、日常の買い物や通院などに使う乗り合いタクシーやコミュニティーバスといった地域交通への支援を拡充し、敬老パスを提示すれば半額程度で乗車できるようにする。
具体的には、駅やバス停から遠いエリアでは、市が地域の意向確認や運行計画の提案を「プッシュ型」で推し進め、採算が合わず本格運行に至らない地域では運行経費の一部を負担するなど支援を拡充する。
最終的に800メートル以内に駅、300メートル以内にバス停がない「公共交通圏域外」のエリアを4年以内に半減させることを目指すという。
75歳以上の運転免許返納した人は無料交付
また、これまでの分析では、敬老パスには外出促進や介護予防に効果がある可能性もあり、引き続きデータを収集するため、市が健診データをもとに抽出した75歳以上の人の中でモニター調査に協力する人には無料で敬老パスを交付する。75歳以上で運転免許証を返納した人にも3年間無料交付するという。
市は来年の3月に敬老パスに関連する条例を改正し、4月からの適用を目指す。敬老パスの地域交通への適用拡大や、モニター調査協力者、免許返納者への無償交付は10月を予定している。