
古くから人が火入れや草刈りをして管理・維持してきた半自然の古草原と、戦後に森林を切り開いて新たにつくられた再生草原。一見したところ違いがよくわからないが、植物や昆虫といった生物の多様性やかかわりを、再生草原が古草原レベルまで回復するには少なくとも75年程度の管理が必要だと、神戸大の丑丸(うしまる)敦史教授(生態学)や筑波大、富山大などの研究チームが13日付で国際専門誌に発表する。長野県上田市の菅平高原で調査した。
半自然の古草原は、近代化や管理する人々の減少・高齢化による放棄で世界的にも減っており、日本でも100年前の10分の1以下に縮小。貴重な動植物が絶滅の危機に瀕(ひん)している。そこで、管理を放棄したり植林したりしてできた森林を伐採し、人による管理を再び導入して再生草原をつくり生物多様性を回復しようという試みが世界でも広がっている。
研究チームは、2021年と22年の5~9月の各月ごとに、菅平高原にある14のスキー場(古草原と再生草原が七つずつ)で5メートル×200メートルの枠を設け、虫が受粉を媒介する植物種とその花数、花を訪れたミツバチやチョウ、ハナアブの仲間などの昆虫種数と個体数を調べた。
植物と虫の関係は、特定の種同士の関係が多くなるスペシャリスト度という指標を計算した。生物多様性が豊かだとこの指標が高いとされる。15種の植物については各地点で種ごとに最大20個体の花からめしべを採取し、付着した花粉の量を調べた。うち5種では果実を最大15個体採取し、自然受粉による種子数を調べ、人工授粉との差をみた。
その結果、再生草原では草原…