オーストリア外務省のアレクサンダー・クメント軍縮・軍備管理・不拡散局長=オンライン映像から

 今年のノーベル平和賞に日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が決まった。ロシアによるウクライナ侵攻に加え、中東情勢も緊迫し、核兵器使用の危機が高まっているなかで、どんな意味を持つのか。長年、核軍縮・不拡散の問題に取り組み、核兵器禁止条約の第1回締約国会議の議長を務めたオーストリア外務省のアレクサンダー・クメント軍縮・軍備管理・不拡散局長に聞いた。

 ――日本被団協への平和賞授与をどう受けとめていますか。

 「非常に賢明で素晴らしい決定です。核戦争のリスクは、これまで以上に高まっています。核軍備競争の再燃という力学が働いており、実に危険な展開です。来年は広島と長崎で核兵器が使われてから80年、国連創設から80年です。核軍縮は国連創設の主な目的の一つですが、我々は今、間違った方向に進んでいます。こうした今日の状況を考えると、核兵器の恐ろしさを自ら体験した日本の方々の受賞はとても重要な意味を持ちます」

 ――日本被団協の活動をどのように評価しますか。

 「私たちは長年、被爆者の方々と密接に仕事をしてきました。私自身深く関わってきた核兵器禁止条約は、被爆者の皆さんの尽力に負うところが大きいです。安全保障政策では『核抑止』という考え方が重視されていますが、極めてリスクが高く、国際的な安全保障を確かなものにするには非常に脆弱(ぜいじゃく)な方法です。被爆者の方々は、核抑止が機能しなかった場合に何が起きるかを教えてくれます。我々は(核兵器という)最も恐ろしく、非人道的で破滅的な力を扱っています」

 ――中東ではイスラエルと、イスラム組織ハマスやイスラム教シーア派組織ヒズボラ、両組織を支援するイランとの対立が激しくなっています。

 「中東では、核不拡散の歯止…

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