中小企業のIT導入を支援する「中小企業基盤整備機構」(東京)の補助金を会計検査院が調べたところ、架空取引やキックバックなど不適切な事案が約9.5億円分確認された。検査院は複数のIT業者が不正に関与しているとして、機構を所管する中小企業庁に不正の調査と過大な補助金の返還を求めている。

 同機構は国から交付金を受ける独立行政法人。中小企業が勤怠管理などのITツールを導入する際に補助金を出している。今回の補助金は、審査の事務局を一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」(サ推協)などに委託した。事務局に登録された「IT導入支援事業者」(ベンダー)が、中小企業にITツールの導入や申請方法を伝える。

 検査院が2020~22年度に補助された1464億円を調べたところ、30事業者の41事業(国費計1億円)で、ITツールを導入していないのに「した」とする虚偽申請や、事業主がIT事業者から導入資金を超えるキックバックを受けたケースなどが見つかった。

 長崎県内の個人事業主は、IT業者「佐世保いいね社」(同県佐世保市)から会計ツールを導入したとして約640万の補助金を受けたが、この業者から約710万円のキックバックを受けていた。

 不正には東京都や福岡県など15のIT業者が関与しており、審査の事務局は「不適正ベンダー」として公表。15社が関係した1978事業(計58億円)を調べている。

 また、79事業者(国費計2.3億円)は、導入したITツールが解約されたにもかかわらず継続的に使っていると報告し、255事業者(計6.7億円)では導入成果などの数字が実態とかけ離れていた。不適切事案を集計すると約9.5億円になる。

立件事案、厚労省幹部の懲戒免職も

 この前身の補助金事業を巡っ…

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