新宿末広亭でトリを務める玉川太福(左)。曲師は玉川みね子=2025年1月22日

 最近、東京の寄席で、これまでにない趣向を凝らした興行が目立つ。

 落語芸術協会による新宿末広亭の1月下席。夜は、浪曲師の玉川太福がトリを務めている。

 22日。三味線の音が2分余り鳴り続け、拍子木の音とともに幕が上がると、立ち見のいるほどいっぱいの客席が軽くどよめいた。高座には、浪曲用の高い演台とテーブルかけがあった。

 2019年に芸協に入った太福はこの日、定席では初めて、講談師が使う釈台ではなく浪曲用の演台を使った。

 聞かせたのは、玉川一門のお家芸「天保水滸伝」の「笹川の花会」。得意の外連を封印した迫力ある俠客(きょうかく)物で、「待ってました」「たっぷり」の掛け声に応えた。演台についても「基本的には前座さんの荷物置き場」と触れ、客を笑わせた。

 落語中心の寄席で、浪曲がトリを務めるのはめったにない。芸協によると、1960年11月に川崎演芸場で先代広沢菊春がトリをとった記録はあるが、東京都心では見当たらないという。

 異例の抜擢(ばってき)は…

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