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札幌市が発行する敬老優待乗車証制度(敬老パス)のICカード=2023年11月撮影
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 札幌市が敬老パス(敬老優待乗車証)制度の見直しを検討しています。市高齢福祉課などへの取材をもとに、見直しの内容や今後の見通し、市政に意見を届ける方法をQ&Aでまとめました。

  • 敬老パス見直し、高齢者から反発続出 若者からは「負担感」の訴えも

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Q 現行制度はどんなもの?

A 70歳以上の市民が、地下鉄・市電・バスを少ない自己負担額で利用できる制度です。年間、1千円~1万7千円の自己負担で1万円~7万円分のポイントをチャージできます。つまり、利用者の負担は10%~24.3%です。

Q いつからあるの?目的は?

A 制度開始は1975年で、「多年にわたり社会の発展に寄与してきた高齢者を敬愛するとともに、外出を支援し、明るく豊かな老後の生活の充実を図る」ことを目的としています。

 当時は70歳以上の対象者が総人口に占める割合は3%で、事業費は約1億3千万円でした。自己負担もなく、無料のフリーパスでしたが、高齢化で事業費が増加し、2005年に利用上限を5万円とし、現行の自己負担割合へと一部有料化されました。その後、2009年に利用上限が7万円に。対象年齢は1975年から70歳のまま、負担割合はこの20年ほど変わっていません。

Q なぜ見直しが必要なの?

A 札幌市は▽財政状況や人口構造の変化による継続の難しさ▽公平性の観点などを挙げています。

 開始当初3%だった対象者は2023年には22%を超え、事業費は約63億円でした。制度の維持にあたって20歳以上の市民1人あたりが負担する額は、有料化後の一時期をのぞき、右肩上がりです。

 現在の70歳以上が現役時代だった2000年頃は約2千円でしたが、2025年は約3千円、2050年頃には4千円を超えるとみられています。

 少子高齢化により、制度を支える世代の負担が、現在の高齢者が現役だった頃に比べて重くなっていることに配慮する必要があると、市側は説明しています。

 また、高齢者の医療や介護に係る費用は今後も増加が見込まれる一方、人口減少の局面に入った札幌市の歳入は、将来的に減少していく見込みです。もともとほかの政令指定都市に比べて自主財源の割合が低く、財政力にも課題があります。

 限られた財源のなか、現役世代の負担を軽減して世代間の「不公平感」を是正しつつ、持続可能な形で制度の趣旨を維持できるか。見直しの検討が進んできました。

 利用実態の偏りもありました。2023年度は、対象者の約半数が1円もチャージしていませんでした。一方、5万円以上チャージした約1割の利用者に総助成額の約半額が費やされていました。JRやタクシーしか使わない人、外出が難しい人は優待を受けられないのも「不公平感」につながっており、受益の偏在が課題となっていました。

記事後半では、見直し案の詳細や寄せられた市民の声、今後の見通しなどを解説します。

Q 見直し案はどんなもの?

A 札幌市は、持続可能な社会に向けては、「市民の健康寿命を延ばしていく取り組みが極めて重要」という認識のもと、2023年に素案を、2024年に素案に対する市民意見を踏まえた実施案を示しました。

 2023年秋の素案は、健康…

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