「成瀬は天下を取りにいく」(新潮社)で2024年の本屋大賞を受賞した宮島未奈さんは大津で暮らす。主人公の「成瀬あかり」をいかに着想したのか、成瀬はこれからどうなるのか。宮島さんへのインタビューを3回に分けて紹介する。初回は、その作品について。
――「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。この書き出しには心をつかまれました。西武大津店の閉店をテーマに書こうと思ったのは?
西武大津店の最後のころは、私も実際に通っていたので、そのころを舞台に書こうと思ったし、コロナ禍だったというのも手伝って、一種の歴史小説のように、史実をもとにしてできたらいいなという感じで書き始めました。
――「成瀬あかり」という主人公は、滋賀愛の強い人物です。どうしてこのような設定に?
まあ、自然とそうなったということなんですけど。話の出発点が「西武大津店が閉店する」ということだったので、自然と地域密着の話になりました。「滋賀に根ざした少女」みたいな方が、キャラクターとして書きやすかったからかもしれません。
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――成瀬は両親も滋賀生まれですが、話し方は滋賀の言葉ではないですよね。どうしてですか?
うーん、別に方言で書く必要はないと思っていて。小説だから標準語でいいと私は思っています。
成瀬が話すところ、想像できた
――侍みたいな、独特な話し方にしたのは?
変わったしゃべり方の方がキャラクターとして立つなというのが理由ですけれど、何でこの話し方なのかっていうのは、自分にそう聞こえたっていう感覚があって、成瀬が話していたところが想像できたからっていうのが、一番の理由ですね。
――成瀬の相方の島崎みゆきは、両親とも滋賀県外の出身です。なぜでしょうか?
まあ、成瀬との対比ですよね。実際、私のまわりに地元出身の人って少ないですよ。子どもの幼稚園でも、20人のうち大津出身のおかあさんは2人ぐらいでした。
――西武大津店閉店というテーマと、成瀬あかりというキャラクターの着想はどちらが先ですか?
「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」 に続く3作目は? 記事の後半で宮島さんが語ります。
成瀬ですね。女子中学生の話…