大相撲の、その日の最後の取組を「結びの一番」という。

 東と西から、力士が土俵に上がる。ここで、行司の最高格・立行司の触れが響く。

 「番数も取り進みましたるところ、かたや○○山、○○山。こなた○○海、○○海~。この相撲一番にて本日のォ、打ちィ止め~」

 この結びの土俵を裁きたいと願い続けた行司がいた。だが、立行司に昇進する一歩手前で、がんに命をうばわれた。

 2013年に急逝した、三役格行司の4代木村正直(本名・山内幸久さん)。

 いま大相撲の本場所では、優…

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