6月9日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆印は共選作です。
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馬場あき子選
昨年は明朝体の人だった今年はゴシック体の担任(奈良市)山添 聖子
未来への希望描けぬ今の世に生きる子供らスマホに浸る(松戸市)加賀 昭人
二(に)の川と交わるところ月の夜の四万十川に大魚跳ね飛ぶ(四万十市)左山 遼
二千人逮捕されても反戦の声高らかに米の学生(取手市)緑川 智
庭隅の枯木の洞を出で来たる蜂は授粉すキウイの咲きて(前橋市)荻原 葉月
「初採りの空豆短歌になるんちゃう?」ばあちゃんが言う簡単に言う(奈良市)山添 葵
田に水の満ちゐし夕べ芹の香と蛙の声をあてに呑む酒(北海道)高井 勝巳
小千鳥の遊ぶ埠頭の春の海はるか国東(くにさき)の山並の見ゆ(光市)永井すず恵
はるかなる子育てのころをなつかしみひとり居に食むよもぎかしわ餅(福山市)金尾 洵子
小諸なる古城にすみれ咲くころか草笛吹いてたづねゆきたし(伊那市)小林 勝幸
【評】第一首は学校の新年度担任の発表。ナイーブな明朝体を書く先生から、個性的なゴシック体の字の先生へ。個性への想像が働く面白さ。第二首は社会的な視野からの子供スマホへの憂い。第六首の下句、作者の成長が楽しい。
佐佐木幸綱選
☆流鏑馬(やぶさめ)の一瞬の…