4月28日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。☆印は共選作です。
(5月5日付けの朝日歌壇は休載します。次回は5月12日です)
- 【投稿はこちら】朝日歌壇がネットからも投稿できるようになりました
- 【5/3配信開始】記者サロン「木下龍也さん×AI短歌 あなたのために詠む短歌」
永田和宏選
パペットのウサギがひょっこり耳を出し異動の保育士荷物が揺れる(長岡京市)深沢 悦子
☆このかみがだれかのウィッグになるんだと三年のばしたかみ切りおえる(成田市)かとうゆみ
人間の形に白き布巻かれ遺体がガザの瓦礫に並ぶ(観音寺市)篠原 俊則
ウクライナの攻撃やめぬプーチンがテロの死者には十字切りをり(浜松市)松井 惠
並び立つ風車の丘の風の中君と頰ばった鮭のおにぎり(京都市)中尾 素子
舞鶴の入江に育ちし牡蠣殻を貝灰にして花壇にちらす(舞鶴市)新谷 洋子
寄す波は海より優し引く波はなほなほ優し春の琵琶湖よ(加古川市)冨家 新子
恐竜の名前に必ず付く末尾「サウルス」の意は「蜥蜴」と知りぬ(舞鶴市)吉富 憲治
もう二回ゴジラを観たという父を案外知らない知ってるようで(富山市)松田 梨子
☆「お」と打てば「お世話になっております」と出てくるあわれ職場パソコン(西条市)村上 敏之
【評】深沢さん、ウサギのパペットがちょこんと耳を出しているのが、いかにも保育士の転勤。かとうさんは小学生だろうか。三年伸ばした髪が誰かの役に立つという喜び。篠原さん、白布が巻かれて却(かえ)ってまざまざと人間の遺体を感じさせる。
馬場あき子選
夜(よ)の森(もり)のさく…