朝日歌壇選者の(左から)永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん=東京都中央区、小林一茂撮影

 2024年最後となる12月29日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。

  • 【投稿はこちら】朝日歌壇・俳壇への投稿、ネットからも
  • 【31日まで配信】木下龍也さん×記者サロン「あなたのために詠む短歌ONLINE」

馬場あき子選

 基地の内どこにも戻る道が無いふるさと探すわれの沖縄(所沢市)風谷  螢

 二重被災受けたる能登の冬晴のテントにカレーの香り漂う(石川県)瀧上 裕幸

 猫までも痩せてやつれたガザの街食われることなく生き延びている(五所川原市)戸沢大二郎

 もしピカソ現世に居たらきっと描く向日葵畑潰す戦車を(越谷市)小田 毬藻

 脱走の北朝鮮兵のその後を思えば闇の曠野浮かび来(一宮市)園部 洋子

 動物は必要以上に食はぬもの苦しみながら人間(ひと)は大喰ひす(栃木県)小谷野代志子

 整然と自衛艦並ぶ岸壁は母と雑魚買ひし朝市の浜(大分県)伊津野富美子

 片方の乳だけになりし妹を誘ひかねてる出湯の旅へ(仙台市)磯田 秀子

 ルンペンや傷痍軍人数多居し生い立ちの頃想う極月(舞鶴市)吉富 憲治

 湖に流れ込みゆく冬の川飛べない鴨が空を見上げる(北名古屋市)月城 龍二

 【評】第一首は沖縄に故郷をもつ作者。故郷への道をたどると、どの道も基地を出ず、故郷はすでにもうなくなってしまったのだ。沖縄の現状を訴える。第二首は能登被災地のテントから漂うカレーの香り。健全だった日常を呼びさます香りだ。

佐佐木幸綱選

 我が畑の最後の栗の樹伐(き…

共有
Exit mobile version