朝日歌壇選者の(左から)永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん=東京都中央区、小林一茂撮影

 11月24日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。☆は共選作です。

  • 【投稿はこちら】朝日歌壇・俳壇への投稿、ネットからも
  • 【配信中】木下龍也さん×記者サロン「あなたのために詠む短歌ONLINE」

永田和宏選

 闇バイト、裏金などしか浮かばない流行語大賞今年の候補(西海市)前田 一揆

 北朝鮮兵十八人が脱走と聞けば眼に浮かぶロシアの曠野(福島市)澤  正宏

 食べ物が廃棄をさるる国で見る皿を差し出す無数の腕(かひな)(鹿嶋市)大熊佳世子

 どちらかが滅びるまでは終わるまいあるいはどちらも滅びるまでか(朝霞市)岩部 博道

 赤字だが残してほしい羽越線海の入り日に染まる贅沢(ぜいたく)(仙台市)沼沢  修

 おやすみといふ言葉ならかけられるあなたが僕をふりむかなくても(宗像市)新谷 休呆

 それぞれの視界を避けてそれぞれが海を向いてるお昼の公園(神戸市)田崎 澄子

☆親子五人揺れる雨戸を押さえてた台風銀座と呼ばれし頃は(薩摩川内市)川野 雄一

 ゴジラから追われる夢を見る妻がけさもゴジラに追われふきげん(福津市)岩永 芳人

 着ぐるみのゴジラに介助されておりそこまでやるか施設(ここ)のハロウィン(和泉市)土居 栄三

 【評】前田さん、嘆かわしい言葉ばかりが浮かぶ年の瀬。澤さん、北朝鮮派遣兵士たちの脱走の記事に、かつて見たロシアの曠野(こうや)のあてどない広さが思われたか。大熊さんは、この豊かな国で、ガザの人々の悲惨を見ているだけの自分を恥じる思い。

馬場あき子選

 かたつむり庭石に上り動かな…

共有
Exit mobile version