写真・図版
朝日歌壇選者の(左から)永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん=東京都中央区、小林一茂撮影

 11月17日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さんです。☆は共選作です。

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高野公彦選

 ピカソの絵目鼻ちぐはぐなる意味を教へてくれし『名画を見る眼』(八尾市)水野 一也

 やはらかきまびき菜ゆがくもともとはそれぞれの名をもちしをさな葉(淡路市)中土井裕子

 まろき文字よし拓本を軸にして掛ける牧水秋ぐさのうた(新潟市)太田千鶴子

 ポスターの笑顔は美男美女ばかり令和の加工技術の高さ(仙台市)沼沢  修

 最下位の丙種の父は戦争を語らず逝った 訊けずに老いた(札幌市)田巻 成男

 もっともっと殺しまっせとネタニヤフいのちを商うごとくに言えり(水戸市)中原千絵子

 白神の橅(ぶな)の黄葉(もみぢ)を賞(め)づる旅夕食は茸づくしとなりぬ(東京都)上田 国博

 映画館、銭湯、駄菓子屋、鶏舎消え虚しき言葉「地方創生」(観音寺市)篠原 俊則

 ハンバーガー齧りてふつと目が合ひし監視カメラの銃口めきぬ(津市)舘 謙太朗

 フランスに住む姪夫婦が三宅島にきて「わー火星みたい」と声あげる(東京都)三輪 裕子

 【評】1首目、10月17日に亡くなられた美術評論家・高階秀爾さんを悼み、その業績を偲(しの)ぶ。2首目、可哀そうだが可愛い、と何種類かの間引き菜をゆがく。3首目、「かたはらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな」の歌。

永田和宏選

 通したい人よりむしろ落とし…

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