11月10日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さんです。☆は共選作です。
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佐佐木幸綱選
お土産に蛇の抜け殻折りたたみ大喜びで持ち帰る孫(和歌山市)宮本 佳子
夕刊の届かぬ街で老いてゆく母とその爪を切る私も(藤枝市)菊川香保里
☆短冊も品書きもない居酒屋のタッチパネルでたのむ湯豆腐(札幌市)田巻 成男
施設での二年の日々がそこにある洗い薄れたパジャマの名前(上越市)大堀 みき
真空管で作りしラジオのうなり音生きていたなあ!昔の電気は(魚沼市)磯部 剛
一村の描きし軍鶏(シャモ)は襖より出でて今にも動きだしそう(岩沼市)相澤 ゆき
深海に耐えてきた虎魚(おこぜ)がスーパーに貌(かお)は怖いが煮付けはうまい(東大阪市)池田 敏子
みそ汁に浮かぶ葱達ほとんどがハートに見えてた幸せだった(旭川市)小野 昭彦
原発の被災者達を励まして涙流しき西田敏行氏逝く(国立市)半杭 螢子
おもろくて涙もろくて情にもろい人間西田敏行逝きぬ(八王子市)額田 浩文
【評】第一首、孫は蛇の抜け殻をはじめて見たのだろう。大興奮の様子が目にうかぶ。第二首、夕刊が無くなってゆきつつあるらしい。明治から続いてきた生活が変わってゆく昨今である。第九、十首、今週は西田敏行氏追悼の作が多くあった。
高野公彦選
そこここに夫の遺品を目にす…