「朝ドラに出るのが夢です」
M―1のエントリーナンバーのシールを胸につけたまま、その人は言った。
数分前まで、1回戦のステージに立って漫才をしていた。
芸名「花屋ユウ」。航空会社勤めをやめ、ウーバーイーツの配達員をしながら芸能事務所に入った。「記憶に残る俳優」を目指している。
役者とM―1。関係ないようで、関係はあるらしい。
昨年、あの瞬間を見て決意
始まりは昨年のクリスマス・イブ。決勝を見て、胸が熱くなった。
「応援していたコンビが優勝したんです」
令和ロマンだ。
「(ボケの)高比良くるまさんと私、同い年で。彼が1位になった瞬間、決めました。来年、私も出る。表舞台に立ってみせると」
友人の音楽家を相方に、コンビ漫才に挑戦することにした。
芝居にも良い影響があるという。「演技の中で、笑いって一番難しい」
セリフ、声、顔、身ぶり手ぶり。不自然だと、クスッともされない。爆笑までの道は遠いが、漫才の稽古が芝居の稽古になる。
遠回り? いや、違う。
「自宅の近くに渋谷のNHKのビルがあるんです。いつか朝ドラに出たくて、渋谷に引っ越してきました。毎日見ながら生活すれば、目標を見失わずにすむ」
仕事に行く前、帰り道。近くを通るたび初心に返る。「やらずに終わる人生は嫌だ」
「ドラマに出たい人はいっぱいいる。セリフを言いたい人がいっぱいいる。私がその中から抜きんでるにはどうすれば」。花屋さんが変えたのは、自分の行動でした。住む街、住宅のグレード、仕事場……。果たして、その結果は?
M―1本番の朝、エナジード…