有明海のノリ取引をめぐり、九州3県の漁連や漁協に独占禁止法違反の疑いがあるとして公正取引委員会が立ち入り検査をしていた問題で、公取委は15日、このうち佐賀と熊本の漁協と漁連の違反(拘束条件付き取引)を認定し、排除措置命令を出した。漁業の組合と組合員との取引で同法違反を認定するのは初めて。
対象は、佐賀県有明海漁業協同組合(佐賀市)と熊本県漁業協同組合連合会(熊本市)。
公取委によると、全てのノリを漁協や漁連に出荷することを生産者に求める「全量出荷」と呼ばれる慣行があり、両者は2018年10月ごろから、この慣行に沿うよう誓約書を組合員に提出させていた。誓約書には、落札されなかったノリを組合員に戻さぬまま処分することも記されていたという。
公取委はこうした慣行は、生産者が独自ルートで取引することを制限しており、独禁法が禁じる拘束条件付き取引に当たると認定した。
公取委は22年の時点で、福岡有明海漁業協同組合連合会(福岡県柳川市)を含めた3者に立ち入り検査を行い、独禁法違反の可能性を指摘。福岡だけは問題点を認め、誓約書を廃止するなどの改善計画を公取委に提出していた。
全量出荷は、漁協がノリの品質をチェックしたうえで入札会を開き、専門商社などを経て小売店に届く流れで、ブランド維持や、買いたたきからの生産者保護の役割を果たしてきたとの主張もある。一方、SNSなどの普及で流通ルートが多様化し個人で販路拡大をしたい生産者にとっては障壁になっているとも指摘される。
命令を受けた両者は同日、代理人弁護士を通じて「漁連や漁協は、ノリを生産者から漁協へ出荷させるという強制はしていない」とのコメントを出し、命令の取り消しを求める訴訟を近く東京地裁に起こす意向を明らかにした。(増山祐史)