山形・庄内地域の食材を生かした独創的な料理で知られ、テレビ番組「情熱大陸」(06年放送)やドキュメンタリー映画「よみがえりのレシピ」(11年公開)にも出演。山形県鶴岡市のイタリア料理店「アル・ケッチァーノ」をはじめ、東京・銀座の「ヤマガタサンダンデロ」など全国各地に直営店がある有名シェフの奥田政行さん(55)だが、2000年の開店から数年間は軌道に乗り切れない時期があった。「さまざまな奇跡への扉を開いてくれた」と言うのは、絶える寸前だった在来作物との出合いだった。
地域で受け継がれてきた在来作物や伝統野菜は、収量が少なく手間もかかるといった難しさから、継承が危ういものも少なくありません。在来作物をめぐる連載の第2部(全6回)では、在来作物を食の現場から支える人たちを描きます。今回はその1回目。
- 【連載第1部】黄色く太いキュウリをブランド化 公務員から転身、在来野菜守る
ミネストローネは失敗、ひらめいた「焼き畑見立て」
「幻のカブを見に行きませんか」
在来作物に詳しい山形大の教員に誘われ、藤沢カブをただ1軒で守っていた農家を訪ねたのは2003年秋のこと。
鶴岡市藤沢地区の奥深い山の斜面で栽培される「藤沢カブ」。木の伐採跡地を利用した焼き畑で昔から作られてきた。カブを畑から抜いてかじってみた。パリッとした食感とともに土の香りがたちのぼり、力強い辛みや苦みを感じた。体の底から衝撃を受けた。
だが、当時このカブは漬物用…