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高齢者救急の問題点と対応策についての提言を説明した日本救急医学会の大友康裕代表理事(右から2人目)ら=東京都内

 救急医療の現場では、本人の希望がわからずに延命治療され、望まない形で最期を迎えることがある。こうした事態が避けられるよう、日本救急医学会などの関係学会は20日、どのような生き方を望み、どのような医療やケアを受けたいかを日頃から繰り返し話し合うよう提言した。家族と会う年末年始の機会を利用して欲しいと呼びかけている。

 今回の提言について、日本救急医学会の大友康裕代表理事は「救急医療を望むときに、意に沿った治療が提供され、自分の望む暮らし方を選ぶための提言であり、決して救急の差し控えを求めるものではない」と強調する。

 高齢化や核家族化で高齢者の救急搬送は増え続けている。そのなかで、助かる見込みが極めて低いために心肺停止になったら蘇生を望んでいない人や、在宅や施設でみとりを希望している人が、心肺停止になって、救急搬送されるケースも少なくない。

 救急現場で懸命に心肺蘇生しても、元のように回復できず、本人が望まない体に負担のかかる治療につながることもある。また、蘇生をしたことについて、本人や家族から医療者が責められることもある。

 このため、厚生労働省は、病気や事故で意思を伝えられなくなった時に備え、どのような医療を望み、どう過ごしたいかなどを家族や医療者らと話し合っておく取り組みを紹介している。「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」や「人生会議」と呼ばれている。

 最期の過ごし方を周囲に伝えておけば、もしものときに望まない治療を避けやすくなる。救急に関わるスタッフの負担が減ることにもつながる。

 ただ、人生会議が広がっているとは言えない。救急現場では、心肺蘇生について家族に意向を聞いても「本人がどう思っているかはわからない」と答えることがほとんどという。

 そこで、日本救急医学会をは…

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