山本晃弘「ビジネスウェアの現在地」
スーツ姿の男たちが、ずらりと並ぶ。何年か前までは、東京・丸の内などのビジネス街でも見られた光景だ。ただ、コロナ禍の影響による新しい働き方の導入で、これほどの人数のスーツ姿を見る機会はなくなった。
これに対して、スーツの製造や販売を生業にする関係者の危機感は大きい。「スーツはなくなってしまうのか」という問い掛けもある。そうしたなか、スーツ業界の有志が集まって「背広散歩」と名付けたイベントを仕掛けている。会社ではなく、個人としてSNSで呼びかけを行い、昨年10月に都内で行われた第1回目の「背広散歩」には70人超が参加、今年3月には大阪でも開催された。
4月末、3回目として浅草で行われた「背広散歩」には90人ものスーツ愛好家が集まった。タイドアップ、クラッチバッグ、ポケットチーフ。写真を見ると、おしゃれ度数が極めて高いのがわかる。発起人の1人である某セレクトショップPRの安武俊宏さんは、「ビジネスウェアとしてのスーツは衰退の危機にあるが、ドレスアップの魅力を盛り上げたい」と語る。アパレル会社コロネットの広報、新井慶太さんによると、メンズ雑誌「GQ」の台湾版が主催したスーツウォークも、「背広散歩」を考える基になったらしい。「3回目は若い参加者も多く、背広を着るのが楽しいと言ってくれる。女性や海外からの参加者もいる」
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