現場へ! 逃げる防災@伊豆(4)
静岡県伊豆市土肥の津波避難複合施設「テラッセ オレンジ トイ」の竣工(しゅんこう)式典があった2024年7月12日。式典の後、関係者が集まりトークセッションが開かれた。
壇上で、アドバイザーとして土肥に通った東大教授の加藤孝明(57)は、旅館協同組合理事長の野毛貴登(55)、伊豆市職員の山口雄一(58)らにマイクを順番に渡し、津波災害特別警戒区域の指定に至るまでの苦労や、自身の思いを語るよう促した。
「100点満点の津波防災計画がどんなものか、みんな分からなかったし、今でも正解は分からない」と加藤は振り返る。「分からないなりに、みんなで考えながら正解を作り出す。それがこれからの地域づくりだと思う」と言う。
災害が起きた時への備えは、個別の地域だけでは終わらない。伊豆半島全体の対応も迫られている。
24年1月1日に起きた能登半島地震。陸路も海路も途絶え、多くの集落が孤立したのを知った伊豆の自治体の首長はみな青ざめた。海と山に囲まれ、内陸から沿岸部への移動は時間がかかる。山間部は土砂災害のリスクが高く、道路も脆弱(ぜいじゃく)だ。地形がそっくりだった。
7市6町で構成される伊豆半島では、首長が定期的に集まり地域振興の戦略などについて意見交換している。その7市6町首長会議の会長はいま、熱海市長の斉藤栄(61)が務める。
「伊豆半島でも同じことになる」
斉藤は石川県珠洲市に派遣し…