Re:Ron連載「身体からの解放と体験共有 玉城絵美が描く未来」第3回
「BodySharing」(ボディシェアリング)は、人とコンピューターで身体の情報、特に「固有感覚」を相互に伝えることで、他者やロボットなどと「体験を共有する技術」です。体験を共有している他者やロボットに対しては、臨場感や没入感に関係する「身体所有感」が発生します。「歩きスマホ」は没入感があり、危険を回避しづらく社会問題になっていますが、ボディシェアリングの没入感はそれ以上です。このため、自身や他者の身をどうやって守るかがとても重要です。イノベーティブな技術だからこそのルール形成について考えたいと思います。
例えば、遠隔地に置かれたロボットとボディシェアリングして農業体験をしていると、そのロボットに対して身体所有感が発生し、ロボットの体が自分の体であるかのように感じます。メタバース(仮想空間)上のアバターとボディシェアリングして友だちのアバターと遊んでいるとしたら、自分のアバターの体を自分の体だと思ってしまいます。
ロボットに身体所有感が発生しているとき
身体所有感がアバターやロボットに発生しているときには、自分自身の体に対する身体所有感は減少しているであろう、ということまではわかっています。つまり、ボディシェアリングをしている状態のときに、自分の身に危険が及んだ場合、気づきはするけれど、ものすごく気づきづらい、というわけです。
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どの国でボディシェアリングの需要が高いかを、クラウドファンディングで実際に調べたことがあります。人気があったのはアメリカ、ドイツ、カナダ、中国、それから日本で、各国で利用したい、自社で運用したいという要望がありました。
もし仮に、そうした特定の国や地域、場所にいる全員が、ボディシェアリングをしたらどうなるでしょう。
電車の同じ車両にいる全員がボディシェアリングでハワイのビーチに行ったとします。ビーチの観光体験を共有している状態になると、自分の生身の体が電車で移動中だということを少し忘れ、自分の生身の体に対する身体所有感を喪失します。
ここで問題なのは、例えばス…