映画からテレビへと、長く娯楽の中心だった時代劇。毎晩時代劇がテレビ放映されていた1990年代、東映京都撮影所(京都市右京区)では週約10本の撮影をしていたという。
その撮影で使われてきたのれん約800枚が、撮影所の倉庫に数多く保存されている。「はたご」や「飛脚」、「太物問屋」など、時代劇ではおなじみの文字が並ぶが、70年ほど前のものも多い。「使い回しできるよう、屋号を書かないようにしています」と装飾統括の辻野大さんは話す。
撮影時には、のれん、看板、あんどんの「かな」や「漢字」の文字がそろうように気を使う。回船問屋も「廻船(かいせん)」や「廻舩(かいせん)」などがあるからだ。筋書きに影響がなければ字体のそろった小道具へと登場人物の職業を変えてもらうこともあるという。
一時は若者向け番組にスポンサーが流れて撮影本数が減った時代もあるが、2023年に俳優・木村拓哉さんが織田信長を演じた「レジェンド&バタフライ」が公開され、動画配信サービスでは海外からも好評を得て、以後、大作撮影が続く。
「(海外にも)注目される作品が出てきたので、今後期待できる」と話す。倉庫ののれんは出番を待っている。