横浜国立大学教授の須川亜紀子さん

 「ドラゴンボール」「Dr.スランプ」などで知られる漫画家、鳥山明さんが今年3月に亡くなった。その先見性や新しさは、どこにあったのか。ポピュラー文化研究が専門の須川亜紀子・横浜国立大学教授に聞いた。

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 ――鳥山明さんのインパクトとは何だったのでしょうか。

 「1980年代のマンガ界で、軽やかな線でのドローイング、デザイン性を併せ持って登場しました。そして、リズムのよい話の展開もある。衝撃でした」

 「アラレちゃんが主人公の『Dr.スランプ』でも『ドラゴンボール』でも、子どもたちがすぐまねできる、いわゆる流行語を作ったのも大きかったと思います。私も『キーン』って言いながら走って、アラレちゃんのまねをしていました」

救世主だったアラレちゃん

 ――先生も、ですか。

 「一番のインパクトは、あのめがねです。めがねをかけた女の子が主人公の少年漫画は、アラレちゃんが一番早かったのではないでしょうか。それまで、女の子がめがねをかけるとイメージが良くなかった。なのに、大きなレンズのアラレちゃんめがねが、ファッションになりました」

 「漫画において、めがねはインテリキャラの記号です。それまでは、いわゆる『めがねキャラ』の女の子は主人公になれませんでした」

 ――少女漫画の昔の主人公は、かわいくて、明るくて、目がキラキラしていて、赤とかピンクとかのかわいらしい服を着た子が多かった印象があります。

 「めがねキャラは脇役で、おとなしめ。それが記号的な意味での典型でした。少年漫画でも、主人公が好きになる女の子はキラキラした子。めがねの子は恋愛対象になりませんでした」

 「そんなめがねの女の子の価値観が、アラレちゃんで大転換した。女性にとっては救世主とも言えたと思います」

 ――救世主ですか。

「ドラゴンボール」など、今や世界中にファンがいる日本アニメ。でも当初は、海外進出に大きな壁があったと言います。その「壁」とは。どうやって打破してきたのか。須川さんが語ります。

 「私自身、中学ぐらいからめ…

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