稲富流鉄砲伝書=大和文華館提供

 古くから春の訪れを告げる花として愛されてきた梅と桜。この二つを題材にした絵画や工芸品を集めた展覧会が奈良市学園南1丁目の大和文華館で開かれている。

 高潔で清雅な花として、広く東洋の文人が絵画や詩に採り入れてきたのが梅だ。展示では鳥の遊ぶ渓流を力強く描いた雪村周継の国重要文化財「花鳥図屛風(びょうぶ)」(右隻(うせき)を展示、室町時代)のほか、月の下で花の香りが漂う様子を表現した「青花梅文皿」(中国・明末期)が目を引く。

 日本に古くから野生種のあった桜は平安時代以降、文学や美術の題材として多く用いられた。鉄砲の使用法をつづった「稲富流鉄砲伝書」(桃山時代)には金銀泥の下絵で桜が描かれ、「花卉(かき)図扇面」(江戸時代前期)とともに、やがて散る刹那(せつな)的な豪華さが印象に残る。

 「展示と共に楽しんでいただきたい」。担当した宮崎もも学芸部課長が勧めるのは、このほど散策路を整備し直した敷地内の庭園「文華苑(えん)」だ。梅が50種ほど植えられているほか、福島県三春町の「三春滝桜」の子孫にあたるシダレザクラは同館の春の風物詩ともなっている。吉田五十八(いそや)が設計した、なまこ壁の建築との対比も美しい。

 「春の訪れ 梅と桜」展は4月6日まで。一般630円など。月曜休館。3月16日には吉海直人・同志社女子大名誉教授による特別講演「外来の梅から国産の桜へ」を、同23日には宮崎課長による講座を予定。いずれも午後2時から。開花状況を含め、問い合わせは同館(0742・45・0544)へ。

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