写真・図版
カン・ジェギュ監督=2024年7月31日、東京都内、牧野愛博撮影

 1936年のベルリン五輪マラソン競技。日本代表として金メダルと銅メダルに輝いたソン・ギジョン(孫基禎)とナム・スンニョン(南昇竜)。朝鮮半島が植民地支配から解放された後の47年、2人はボストン・マラソンに出場した若い才能のある選手ソ・ユンボクに「祖国の記録」を取り戻す願いを託す。8月30日、全国ロードショーで公開される韓国映画「ボストン1947」は、「シュリ」「ブラザーフッド」などで知られるカン・ジェギュ監督が手掛けた実話に基づくヒューマンストーリーだ。来日したカン監督は、「日韓の若い人々がこの映画を見て、歴史に思いをはせてくれたらうれしい」と語る。

 ――映画は、47年のボストン・マラソン大会が舞台になっています。

 この映画に悪役は出てきません。ただ、主人公たちはいろいろな問題にぶつかり、悩み、苦しみます。それは47年という時代でした。朝鮮半島は45年に解放されましたが、韓国が独立するのは48年です。

 47年当時、政治理念の対立が激しく続き、心を落ち着かせる場所がない状態でした。この映画は、そんな混乱した時代に、主人公たちが心を一つにして走るというドラマチックな実話を描いています。あえて言えば、その時代が悪役だったのです。

「本当のマラソンランナー」演じたイム・シワン

 ――マラソン映画を撮影するのは難しくなかったのでしょうか。

 観客が、ソ・ユンボクが走る…

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