星合志保四段=2024年8月27日、北野新太撮影

 3年前の沈黙を思い出す。夢に見た舞台で敗れ去った後、思いを問われて何も言葉が出てこなかった長い時間を。

 勝負の世界を生きる者としての彼女の本質は、あの沈黙の中に表れていたと思えてならないのだ。

 星合志保四段(27)。囲碁界をひとつの碁盤に例えるならば中心点たる天元に立つ棋士と言えるだろう。朗らかな人柄で親しまれ、棋士間において年齢や性別も関係なく幅広い交流を持ち、ファンに対する普及活動では常に先頭に立ってきた。毎週日曜放送の「NHK杯テレビ囲碁トーナメント」では昨年3月に卒業するまでに読み上げ係を4年、司会を実に5年も務めた。

 そして、2021年に女流本因坊戦の挑戦者になった実力者でもある。

 デビューから8年かけて到達したタイトル戦の舞台だった。

 第一人者であり、普段から親しい藤沢里菜女流本因坊に挑戦したが、1勝を挙げることができずに3連敗で敗退した。

 局後のインタビューで思いを問われた時、言葉に詰まり、ずっと声を発せられなかった。あの姿が今も心に残る。

 どのように囲碁と向き合ってきたか。

 どのように囲碁と向き合っているか。

 どのように囲碁と向き合っていくか、を尋ねた。

     ◇

 小学1年の時、二つ上の兄(星合真吾さん。囲碁のアマチュア強豪として今も活躍)と一緒に「ヒカルの碁」のアニメを見て興味を持ちました。

 兄が近所の公民館で囲碁サークルをやっているのを見つけて通い始めて、すごく楽しそうで。半年くらい経った後で、私も「ちょっと気になるなあ」って、兄についていくようになりました。

 2年生になって、兄が緑星学…

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