旧優生保護法を違憲とした最高裁大法廷の判決の後、最高裁前で「勝訴」と書かれた紙を掲げる原告団=2024年7月3日午後4時13分、東京都千代田区、西岡臣撮影
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 旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、障害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長=戸倉三郎長官)は3日、旧法を「立法時点で違憲だった」とし、国に賠償を命じる判決を言い渡した。不法行為から20年で賠償請求権が消える「除斥(じょせき)期間」については、旧法による人権侵害の重大性に照らし「今回適用するのは著しく正義・公平の理念に反する」と判断した。

 5訴訟の原告に限らず、強制不妊手術の被害者の救済に全面的に道を開いた。「違憲」は15人の裁判官全員一致の結論。最高裁が法令を違憲と判断したのは戦後13件目で、立法時点で違憲だと明示したのは初めて。

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 判決はまず、旧法の違憲性について「不良な子孫の淘汰(とうた)」を目的に不妊手術を認める規定は、障害がある人などを「不良」とみなしていて、「当時の社会状況をいかに勘案しても正当化できない」と指摘。立法目的のために生殖能力を失わせるという重大な犠牲を強制し、憲法13条が保障する「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」を侵害する、とした。また、障害がある人らだけを手術の対象としたのは差別的取り扱いで、「法の下の平等」を定めた憲法14条にも違反する、とした。

 同法は、本人の同意を得た上で手術を実施する類型も定めたが、同意が自由意思に基づくとの担保はなく、そもそも同意を求めること自体が13条の精神に反して許されないとした。

 その上で、明白に違憲の法律をつくった国会議員の立法行為自体が「違法だった」と断じた。

賠償免責の主張は「著しく正義・公平に反する」

 最高裁は1989年、不法行為への損害賠償請求権は20年経てば被告側が主張しなくても、機械的・絶対的に消滅すると判示している。国側はこれを踏まえ、「半世紀以上前に手術を受けた原告らの請求権は消滅した」と主張してきた。

 これに対し大法廷は、当初か…

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