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外務大臣表彰を受けた考古学者の猪熊兼勝・京都橘大名誉教授=奈良県橿原市、清水謙司撮影
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 飛鳥時代を語るとき、朝鮮半島との国際交流は欠かせない出来事だ。そんな飛鳥の歴史に詳しい猪熊兼勝・京都橘大名誉教授(86)=奈良県橿原市=が、今年度の外務大臣表彰を受けた。日韓交流の人気イベントの責任者を務めるなど、日韓両国の相互理解を促進してきたことが評価された。

 猪熊さんは、奈良文化財研究所(奈文研)出身の考古学者。奈文研飛鳥資料館学芸室長などを歴任してきた。高松塚古墳やキトラ古墳(ともに明日香村)の国宝極彩色壁画の価値や、発見当時の様子を熟知するなど、飛鳥の歴史の大家で名高い。

 今回の表彰は、日本と諸外国との友好親善関係の増進に特に功績のあった個人や団体に贈られるものだ。

 猪熊さんは、日韓の相互理解・友好親善を目的としたNPO法人大阪ワッソ文化交流協会の理事長を長く務めた。古代からの日本と朝鮮半島の交流を再現する人気の祭り「四天王寺ワッソ」の実行委員会委員長も担った。外務省は今年8月、一連の日韓の文化交流に寄与した功績をたたえた。

 「(研究者として)韓国とは1970年代から、その後、四天王寺ワッソにも関わるようになりました。長い間の努力は無駄ではなかった。大変うれしく思います」。表彰状を手に猪熊さんはこう話す。駐大阪韓国総領事館の総領事も7月、日韓両国の文化交流・友好増進に寄与したとして、猪熊さんに表彰状を贈った。

 「(日本初の本格的寺院とされる)飛鳥寺は、百済からお寺をつくるプロジェクトチームが派遣されました」「(飛鳥の謎の石造物)猿石は百済の弥勒寺周辺にそっくりさんがあるんです」――。猪熊さんは飛鳥時代の朝廷が朝鮮半島の中でも、特に百済と交流が深かったと教えてくれた。

 「年を取って以前ほど韓国に頻繁には行けないが、勉強してきたことをまとめてみたい」。今後も日韓両国の相互理解に役立とうと研究を続けるつもりだ。(清水謙司)

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