【動画】日本製鉄の橋本英二会長の会見=吉本美奈子撮影
日本製鉄は、米同業USスチールの買収計画について禁止命令を受けたことを不服としてバイデン米大統領らを6日付で提訴し、7日午前に橋本英二会長会長が記者会見を開いた。当初15分とされていた会見は、司会者が終了を促したが橋本氏はそれをさえぎり、挙手が続く記者の質問を受け続けた。橋本氏は買収に関して日本製鉄とUSスチールの両者に利点があることを強調。そのうえで、大統領令に対して「政治的介入」と述べるなど、米政権に強い不満を示した。橋本氏の主な発言は以下の通り。
- 「違反を確信、勝訴のチャンスある」 米大統領ら提訴の日鉄が会見
【冒頭発言】
バイデン大統領によって、本件(日本製鉄のよるUSスチールの買収)についての禁止命令がございましたが、本件は当社の経営戦略上の最重要マターであるということだけではなく、日本およびアメリカ両国にとって極めて有益であるというふうに今も確信している。
グローバルに収益基盤を拡大して、日本国内で設備投資を増やしていくということ以外に日本の成長と分配の好循環を回すことはできない。日本にとっても極めて重要な案件の一つであろうと思う。米国にとっても、USスチール単体ではなく、当社とUSスチールとのパートナーシップで進めていくということが、USスチールが将来にわたって競争力を保ち、発展し続けていくための最善の方法であって、USスチールの従業員の皆さん、地域コミュニティーの皆さん、米国内のお客様、産業全体の利益にかなうものであると思っている。
当社の技術・商品を投入することによって、現在アメリカでは十分につくれていない鋼材もつくることになるので、アメリカの国家安全保障の強化に資すると考えている。
したがって、米国の事業遂行を決して諦めることはない。「あきらめる理由も必要もない」というのは私の考え方であるし、日本製鉄、USスチールの一致した考え方だ。
当社およびUSスチールが、提訴に踏み切らざるを得なかった背景について説明する。米国市場における自らの優位性の確保を目的として、本社の米国参入を何としても阻止したいUSスチールの競合メーカーの「クリーブランド・クリフス社」およびそのローレンソ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)が、誠に不可解なことであるが、「全米鉄鋼労働組合(USW)」のデビッド・マッコール会長と連携し、組合の有する強大な政治力を利用してバイデン大統領に働きかけたというものだ。こともあろうにこの働きかけに、政治的な理由から応じたバイデン大統領の違法な政治的介入より、CFIUS(対米外国投資委員会)の審査手続きも適正に実施されないまま、今回の大統領命令に至ったものであり、到底受け入れることはできない。以上が当社およびUSスチールが提訴に踏み切った背景だ。
米国鉄鋼産業に置かれている極めて厳しい不透明な状況の中で、当社とUSスチールがこの買収を通じて協力し合うと、それ以上に米国の鉄鋼業を強くする道があるとは思えない。関税政策だけで、産業が強くなるとは決して思えない。米国鉄鋼業、USスチールにとって最適な提案であるという思いは変わらないので、必要な法的措置についてはあらゆる手段を講じているということだ。
「そもそも、問題なく承認されてしかるべきもの」
【質疑応答】
――今回の訴訟は米国事業を…