日本と米国とでは、中高年代のキャリア意識にどのような違いがあり、日本が参考にできることはないのか――。リクルートは労働市場で多くの割合を占める40~59歳を「ミドル世代」と定義し、日米比較の調査をしました。個人の転職相談や企業の採用支援をするリクルートエージェントの近藤裕さん(45)に、成果やミドル世代を巡る課題を聞きました。
――なぜミドル世代のキャリアに注目したのですか。
人手不足が進み、企業側は思うように採用ができていません。企業は世代を問わずに幅広い人が活躍できる環境を用意しないと事業運営が難しくなっています。働く側からすると、仕事の機会や選択肢は増えており、ミドル世代の転職も増えています。キャリアに対する考え方次第で、多くの可能性が開けるのではという問題意識がありました。
――日米比較の調査結果ではどんなことが印象に残りましたか。
調査は昨年実施し、日米のフルタイム勤務者それぞれ約1200人から回答を得ました。日米のミドル世代で差が大きかった回答は、キャリアについて考える機会です。キャリアデザインに関する教育を「学生時代に受講したことがない」割合は日本が8割、米国は4割弱で、想像よりも差が大きかったです。
――その差はどこから来るのでしょう。
米国では雇用の流動性が高く、転職が当たり前です。一方の日本は、終身雇用を前提とした人事制度が根強い。つまり、一度入社すれば、その後の転職などのキャリアについて考える必要性が薄かったのです。将来のキャリア形成に向けて、取り組んでいることが「ない」という日本のミドル世代が5割弱なのに対して、米国では1割弱という調査結果も出ています。
日本でも転職が身近になってきていますが、労働市場はまだ未成熟な側面があると感じています。例えば、どのような仕事が、どれくらいの給与水準で必要とされているかなどの仕事の条件があいまいな場合が多いと思います。個人が転職しようと思っても、躊躇(ちゅうちょ)しやすい環境になっています。
――日本では勤務先でキャリアのアドバイスをもらえる機会が少ないという結果も印象的でした。
上司や、さらにその上司も転職経験がない人が多く、「キャリアアップして、今の会社で活躍できるか?」というアドバイスに偏っているのが実情です。上司はキャリアについて話しているつもりでも、受け手は「自分自身のキャリアの幅や選択肢は狭い」と感じてしまったり、社外で自分のスキルは通用しないのかという危機感を持ってしまったりすることがあります。
年代上がると広がる個人差 採用側の負担も増えるが良い兆しも
――ミドル世代がキャリアについて考えることはまだ難しい環境なのでしょうか。
ミドル世代にとって、キャリ…