日本製鉄は6日、米同業USスチールの買収計画について禁止命令を受けたことを不服とし、バイデン米大統領らを提訴したと発表した。USスチールも原告に加わった。日本の大企業が米大統領を訴えるのは異例。昨秋の米大統領選にからみ政治問題化していた2兆円超の大型買収計画は、法廷闘争に発展する。
バイデン氏は買収が「国家安全保障上の脅威になる」として禁止を命じた。それに先立ち、米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)が安保への影響を審査したが結論を出せず、判断をバイデン氏に一任していた。
日鉄側は、大統領選でバイデン氏が買収に反対の全米鉄鋼労働組合(USW)の支持を得るために審査制度が悪用されたと主張。命令と審査の無効を求める訴訟を米連邦控訴裁判所に起こした。
両社はまた、USスチールと競合する米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスと、両社の従業員が加わるUSWの会長に対しても、別の訴訟を米連邦地裁に起こした。買収計画に対する違法な妨害をやめさせる命令のほか、損害賠償を求めている。日鉄は7日に記者会見を開き、詳細を説明する。
禁止命令に対しては日本の政財界からも注文が相次いだ。石破茂首相は6日の記者会見で、「なぜ安全保障上の懸念があるのかきちんと述べてもらわなければ先の話にならない」と語った。経団連は「今後の対米投資、日米経済関係への影響が憂慮される」とコメントした。