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日本芸術院(野村萬院長)は20日、新しい会員の候補に俳優の倍賞千恵子さんやアニメーション映画監督の富野由悠季さんら15人を決めたと発表した。アニメの分野からの選出は初めて。3月1日付で文部科学相が発令する。
芸術院は各分野の優れた芸術家を経済的に優遇するための栄誉機関。会員は非常勤の国家公務員で年250万円の会員年金が支給される。任期は終身。定員は120人で今回の15人を含めると計115人になる。女性の候補者数は、昨年度が12人中7人だったが、今回は2人にとどまった。全体では男性88人、女性27人になる。
選考では会員や外部の有識者会議がまず62人を推薦。選考委員会と会員投票を経て15人を選んだ。4年ぶりに辞退者はいなかった。
新会員候補は次の皆さん。(敬称略)
▽絵画
中林忠良(なかばやし・ただよし)87歳。銅版画の第一人者として世界的に活躍。銅版を腐食させる技法の可能性を追求した。日本美術家連盟理事長。文化功労者。
▽工芸
大樋年雄(おおひ・としお、本名・奈良年夫)66歳。金沢・大樋焼十一代。欧米やアジアの国々でも活動し、茶道など日本文化を伝導する。恩賜賞・日本芸術院賞。
▽建築・デザイン
隈研吾(くま・けんご)70歳。作品は「和の建築」と言われ、自然と技術と人間の新しい関係を切り開く。東京大特別教授・名誉教授。恩賜賞・日本芸術院賞。
▽同
坂茂(ばん・しげる)67歳。今日的な課題を作品に反映させる建築家として国内外で活躍。災害地の仮設住宅の設計にも尽力。プリツカー建築賞、世界文化賞。
▽写真・映像
十文字美信(じゅうもんじ・びしん)77歳。広告写真の可能性を広げたほか、アンディ・ウォーホルら世界的芸術家の撮影も手がけた。日本写真協会賞作家賞。
▽同
畠山直哉(はたけやま・なおや)66歳。建築の解体現場や地下水路など都市の裏側を撮り続け、芸術性の高い写真を生み出してきた。日本写真協会賞作家賞。
▽小説・戯曲
多和田葉子(たわだ・ようこ)64歳。詩的言語と物語的言語を巧みに融合した作品の多くは外国語に翻訳され、ドイツ語でも創作。朝日賞、恩賜賞・日本芸術院賞。
▽詩歌
藤井貞和(ふじい・さだかず)82歳。詩作・詩論活動に加え、源氏物語研究の泰斗であり、古文学や歌謡などの分野でも成果がある。東京大名誉教授。日本芸術院賞。
▽歌舞伎
中村魁春(なかむら・かいしゅん、本名・平野豊栄)77歳。六代目中村歌右衛門の薫陶を受け、品格のある女形として活躍。近年は若手の指導にも力を入れる。
▽文楽
桐竹勘十郎(きりたけ・かんじゅうろう、本名・宮永豊実)71歳。「人形浄瑠璃文楽人形」の人間国宝。人形遣いとして現代美術とのコラボレーションなど幅広く活動。
▽洋楽
尾高忠明(おたか・ただあき)77歳。英BBCウェールズ交響楽団の首席指揮者を務めるなど国内外で活躍。大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督。大英帝国勲章(CBE)。
▽演劇
野田秀樹(のだ・ひでき)69歳。長年オリジナルの脚本、演出で舞台を制作。オペラや歌舞伎の演出も手がける。東京芸術劇場芸術監督。大英帝国勲章(OBE)、朝日賞。
▽同
橋爪功(はしづめ・いさお)83歳。文学座などを経て演劇集団「円」の結成に参加。シェークスピアなどの古典から現代劇まで幅広く役をこなす。旭日小綬章。
▽映画
富野由悠季(とみの・よしゆき、本名・富野喜幸)83歳。手塚治虫のもとで「鉄腕アトム」に携わる。アニメーション監督として「機動戦士ガンダム」などヒット作多数。
▽同
倍賞千恵子(ばいしょう・ちえこ、本名・小六千恵子)83歳。61年に映画デビュー。民衆の生活感情を全身で表現する演技で映画やテレビ、舞台で活躍。旭日小綬章。