現場へ! デフリンピックが来る(1)
昨年12月7日、彼らの姿は五輪代表らの強化拠点となっている味の素ナショナルトレーニングセンター(東京都北区)にあった。
「彼ら」とは、今年11月、東京を中心に日本で初めて開催される聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」に向け、初めて結成された男子のデフハンドボールチームのことだ。14~57歳の強化対象選手25人のうち未経験者が半数以上を占める。
「まずはきっちり跳ぶ、構える、投げる」。ハンドの元実業団選手だったコーチが身ぶり手ぶりを交えて話す姿を、選手たちは真剣なまなざしで見つめる。傍らでは手話通訳者がコーチの指示を伝えていた。主将の小林優太(23)は「こんな施設で練習できていることに自分が一番驚いている。急ピッチで物事が進んでいる」と話した。
高校時代に競技経験があった小林は筑波技術大の学生だった2022年、ある教授からデフリンピックが日本で開かれると聞き、サークルを立ち上げた。日本ハンドボール協会内にデフ組織が置かれるなど、日本の初出場を見据えた体制も整えられた。小林のSNSでの呼びかけやトライアウトなどを経て、わずか3人だった選手は20人を超えた。
月1回の強化トレーニングはナショナルトレセンを使えるが、普段は都内の特別支援学校の体育館などを借りて練習する。「組み立て式のゴールを車で運び、養生テープでコートを自作する。手慣れてきました」と小林は言う。
チーム発足を聞きつけ、ハンドの実業団選手らがコーチとして協力を申し出てくれた。デフハンド専門委員会委員長の中村有紀(47)は「スペシャリストたちに恵まれた」と感謝する。
聞こえ方は十人十色
ただ、当初はうまくいかない…