日本でも脂肪肝から肝がんを発症する患者が増えているが、肝硬変のように肝臓が硬くならなくても発症する場合があり、リスクを予測するのが難しい。大阪大や北海道大、佐賀大などの研究チームは、肝臓の硬さとは別に、血液中の特定のたんぱく質が多い脂肪肝患者が肝がんになりやすいことを発見した。肝がんになりやすい脂肪肝患者を効率よく見分ける新たなバイオマーカーの開発をめざしている。
肝がんは日本では従来、C型肝炎やB型肝炎などウイルス性が多くを占めていたが、ここ20年で脂肪肝やアルコールなどによる非ウイルス性が増え、新規患者の約6割を占めるほどになっている。脂肪肝は食生活の欧米化や運動不足などを背景に世界中で増え、日本でも成人の4人に1人が脂肪肝とされる。
脂肪肝が肝硬変まで発展すると高い頻度で肝がんを発症するが、少し硬い程度でも一定の割合で肝がんを発症する。少し硬い程度の脂肪肝患者は非常に多いため、すべての人に専門医が超音波などで定期検査をするのは難しく、早期発見・治療のため、リスクを見分けるバイオマーカーの開発が課題となっている。
研究チームは、血液中に分泌され、肝臓のがん細胞を成長させることでも知られるGDF15というたんぱく質に注目。阪大病院や佐賀大病院など4病院で、肝がんではないが肝生検をうけた518人の脂肪肝患者の血中のGDF15の量を測定したところ、肝臓の硬さにかかわらず、1ミリリットルあたり1.75ナノグラムを境に、その後の肝がんの発症率が跳ね上がった。同1.75ナノグラム以下だと、肝臓が硬くても5年以内に肝がんを発症した患者はいなかった。
肝臓の硬さの指標が中リスク以上の患者だと、血中GDF15値が同1.75ナノグラムを超えると、肝がん発症率だけでなく、肝臓の働きが悪くなって起きる腹水や意識障害などの発生率も高く出た。
北海道大病院に通院している216人の脂肪肝患者にあてはめても、同様の結果となった。肝臓の硬さの指標が中リスク以上で、GDF15値が同1.75ナノグラムを超える患者の5年以内の肝がん発症率は16.5%。それに対し、肝臓の硬さ指標は同じだがGDF15値が同1.75ナノグラムを超えない患者だと1.8%。二つの指標を組み合わせることで、肝がんの発症リスクを高い患者を効率よく見分けられることを確認できた。
別の病院で人間ドックで脂肪…