中学生に壊された後、修復して新しく制作したクワクボさんの作品=2022年9月8日、新潟県十日町市、白石和之撮影

 2022年に「大地の芸術祭」が開かれていた新潟県十日町市の「越後妻有里山現代美術館MonET(モネ)」で、展示作品が修学旅行中の新潟市の中学生に壊された問題は、新潟市が十日町市に損害賠償金674万円を支払って和解することになった。関口芳史・十日町市長は「一応の区切り」とする一方で、「当時の中学生にはこれで良しとは思って欲しくない」と語った。

 壊されたのは美術家クワクボリョウタさんの作品。光をともした鉄道模型が暗闇の中を走ると、床に置かれたモノが壁に大きく投影され、移ろう車窓の風景のように見えるものだ。この作品を修学旅行に来ていた新潟市立中学校の複数の3年生が踏んだとして、十日町市側は新潟市に損害賠償を求めたほか、被害届を出した。県警は器物損壊容疑で捜査を進めた。

 新潟市教育委員会によると、生徒たちは聞き取りに対し「暗くて足に物が当たった」などと答えたという。県警の捜査でも故意とは立証されなかったと、同市教委は取材に説明。ただし、教育活動としての修学旅行中の事案だったため、新潟市に責任があるとして、賠償額について十日町市と協議してきたという。

 新潟市は十日町市に損害賠償金674万円を支払って和解する議案を市議会に提出し、23日に可決された。十日町市の関口市長は同日にあった記者会見で、故意による損壊とは断定できなかったと県警の捜査について語り、新潟市と和解する考えを示した。

 一方で当時、作品が壊された現場を見た当事者として「間違えて踏んでしまったという状況ではなかった。その点はしっかり申し上げておきたい」と改めて話し、すでに卒業した当時の中学生たちに対し「これで良し、では困る。当時、何が実際にあったのかを、考えてもらいたい」と注文した。

 当時、クワクボさんは「この事件が彼らや彼らのコミュニティ、そして芸術を愛する人々に悪い爪痕を残さないよう、最善を尽くしたい」と中学生らを思いやるコメントを自身のSNSで出し、壊された作品を修復した新作を同じ会場に展示した。

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