伊豆の国市が計画する文化財展示施設の外観イメージ=伊豆の国市提供

 歴史や文化を生かした街づくりの拠点として、静岡県伊豆の国市が計画する文化財展示施設の概要が固まった。建設資材の高騰などの影響で心配されていた建設業者も競争入札で決まった。当初の計画にはなかった屋上テラスも設けられ、富士山を望む絶景ポイントになりそうだ。

 市内には韮山郷土史料館があり、1950年に見つかった山木遺跡の出土品が展示されていたが、老朽化で2017年に閉館した。稲作技術の歴史を知るうえで重要な遺跡で、史料館には重要有形民俗文化財に指定された「ねずみ返し」など貴重な出土品が多数展示されていた。

 いまの郷土資料館は市立中央図書館の2階にあるが展示スペースは約100平方メートルと狭く、出土品の多くは図書館の地下駐車場を改装した特別収蔵室などに保管されている。

 新たな施設は、韮山文化センター(韮山時代劇場)南にある大駐車場の敷地内に建設される。鉄骨3階建て、延べ床面積約1200平方メートル。展示スペースは約400平方メートルで、郷土資料館の4倍になる。1階は市民交流と観光・情報発信のコーナー、2階が展示スペース、3階に約12メートル四方のガラス張り展望室と当初の計画にはなかった約70平方メートルの屋上テラスが設けられる。

 特に重視したのが、1階に設ける約96平方メートルの市民交流スペース。市民の作品や地域伝承品を展示したり、ワークショップを開いたりして「市民とともに育てていく場」と位置づける。ボランティアによる案内や見守り、火起こしなどの体験学習を補助するサポーター制度も導入する。

 2階には北江間横穴群のジオラマや韮山城跡の立体模型、プロジェクションマッピングを使った紹介など工夫を凝らした展示を検討する。

 市は昨年末に説明会を開き、市民に施設の概要を明らかにした。「観光行政を巻き込んだ事業展開になる」「市民の力を生かせる」といった前向きな意見が寄せられた。

 総事業費は約12億円で、うち建築費は約7・6億円となる。建設資材や人件費の高騰で静岡県内の公共施設では計画の見直しを迫られるケースが出ており、この施設も不安視されたが、14日の開札で事業者が決まった。合併特例債が使える2026年3月末までに完成させ、同4月に開館する予定だ。

共有
Exit mobile version