衆院予算委で、日本維新の会の前原誠司共同代表の質問に答弁する石破茂首相=2月17日

記者コラム 「多事奏論」 編集委員・伊藤裕香子

 東日本大震災からちょうど1年にお会いして以来の非礼をわび、宮城県石巻市の港近くに後藤春雄さん(78)を訪ねた。津波が押し寄せた跡がくっきり残る工場で聞いたあのときの言葉を、このところよく思い返すからだ。

 「遠くにいる見ず知らずの人たちに、私たちは助けられている。工場を早く元に戻し、税金を納められるようになって、少しでも恩返しをしたいです」

 配管など大型設備の溶接や据え付けを担う宮富士工業は4トン車で60台分のヘドロをかき出し、震災12日後に操業を再開した。「平常に動かすのに3年ほどかかったかな」と社長の後藤さん。まだ苦労募るさなかに、なぜ、あの言葉を?

 「助け合うのは順ぐり、順ぐりだもの。自分さえよければ、というのは嫌でさ。税金を払えないときは心の利益、ささやかでも気持ちと募金で。やっぱり支えは、人のつながりだよ」

 自分の溶接機をぜひ使ってと、千葉県からトラックで運びこんでくれた知らない人がいた。全国の人が出した税金からの補助金がなければ立て直しは遅れた、とも振り返る。

 13年前の後藤さんの言葉を改めて考えたのは、政府予算案の与野党協議への引っかかりがある。

 少数与党政権は、多極化した…

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