大災害を教訓とした主な政府の体制強化

 能登半島地震の発生から半年。大規模災害に対応するため、岸田文雄首相が政府の体制強化を検討し始めた。初動対応への課題が指摘される中、専門組織の創設も視野に入れるが、慎重論も根強い。9月の自民党総裁選で争点になる可能性があり、実現できるかは見通せていないのが現状だ。

 事実上の国会閉会を受けた6月21日の記者会見。首相は大規模災害への備えを、こう説いた。

 「政府の災害対応体制の強化について、法改正も視野に速やかに方針をとりまとめる」

 首相の「体制強化」発言の念頭には、災害対応に特化した新たな組織づくりがある。首相周辺は「『災害危機管理庁』のようなものをつくればいい」と話す。政府関係者によると、省庁横断で復興業務を取りまとめる事務次官級のポストを新設する案が検討されているという。

 現在の政府の災害対応は、内閣府の防災担当政策統括官のもと、物資支援や避難者支援など役割ごとに配置された職員が各省庁の取りまとめを担う。

 だが今回の能登半島地震は、道路が寸断された半島という地理的条件下で状況把握が進まず、縦割りの災害対応の限界も指摘された。

 政府は、150人規模の関係省庁職員を現地へ派遣する「能登創造的復興タスクフォース」を設置したが、あくまで時限的な措置。ある幹部は「南海トラフ地震などに備え、今回は本気で『防災省』を考えた方がいい」と話す。

 こうした状況を受けて、災害対応を一元的に指揮する司令塔組織の構想が、首相官邸内で浮上している。首相周辺は、来年の通常国会で必要な法改正をする可能性にも言及する。

 新組織構想の大きな問題は…

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