「十二宮・並行世界」 挿絵・風間サチコ  現代社会をイメージした作品を毎月掲載します。
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論壇時評 宇野重規・政治学者

 2024年は世界的な選挙イヤーである。ウクライナとパレスチナ・ガザ地区での戦闘が続き、世界秩序が不安定化するなか、各国のリーダーや議会の構成を決める選挙が相次ぐ。はたして、新たな秩序の可能性が見えてくるのか、はたまたさらなる分極化が進むのか。今年前半の世界の選挙を総括すると同時に、米国大統領選へと向かう後半を展望したい。

 直近の選挙で注目されるのは、6月4日開票のインドの総選挙であろう。モディ首相の率いるインド人民党(BJP)の圧勝が予想されていたが、むしろ大幅に議席を減らし、単独では過半数を割ることになった。何とか政権を維持し、インド初代首相ネルー氏以来の3期連続の首相となるなど、モディ首相の国民的人気は依然として高いとはいえ、選挙がその強権的な支配に大きくブレーキをかけたことになる。

 インド政治の伊藤融(とおる)は、モディ首相の庶民的な出自の巧みな演出やインドのグローバル大国化などにより、権威主義的手法が国民的に支持されていることを指摘しつつ、「ヒンドゥー国家」実現のプロジェクトが多様性の国であるインドの分断を深めていることを強調する(〈1〉)。物価高騰や失業への不満も募る。強権政治で後退した民主主義が、それでもなお無条件の信任を与えなかったことが重要だろう。

「歴史に残る」欧州議会選挙 環境政策見直し必至

 雑誌「外交」の85号に興味深い論考が目立つ。韓国政治や東アジア国際関係を研究する磯崎典世、阪田恭代と朝日新聞記者箱田哲也の鼎談(ていだん)は、総選挙後の韓国と東アジアを展望する(〈2〉)。韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領にとっての「中間選挙」にあたる4月の総選挙の結果は苦いものであった。与党「国民の力」が惨敗し、野党「共に民主党」が大勝したことにより、政権後半のレームダック(無力)化が進むことも予測される。

 鼎談では「批判合戦に終始し…

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