能登半島地震の被災地でひと組の夫婦が、処分されそうな輪島塗の食器を預かり、使ってくれる人を探して譲渡する取り組みを進めている。家屋が倒壊し、思い出や伝統が詰まった品々さえ手放さざるを得ない現実。持ち主の思いと、土地ならではの文化を次世代につなごうという試みだ。
住宅をはじめ9千棟超の建物被害が確認されている石川県能登町。この町で生まれ育った船下智香子さん(54)と、夫でオーストラリア出身のベンジャミン・フラットさん(58)は町内で民宿「能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと」を営む。
フラットさんのイタリア料理は、伝統的な発酵調味料の魚醬(ぎょしょう)「いしり」や近くの漁港で水揚げされたイカなどの魚介類、自ら育てた野菜や果物といった地場の食材をふんだんに使う。輪島塗の器に盛りつけられ、宿泊客らの人気を呼んできた。
廃棄される現実、痛んだ心
地域の食文化や伝統を大切に…