バックネット裏の父に向かって感謝を伝える慶大の清原正吾

 試合前、慶大野球部4年の清原正吾はまず、神宮球場の内野席を見回す。

 たとえ大勢の観客の中にいても、「一目でわかる」という。白髪まじりの頭に、大きな肩幅。いつも開始の1時間以上前から、父・和博さん(57)が座っていた。

 父は大打者だ。甲子園で2度の全国制覇を果たし、プロ通算525本塁打を放った。大学で6年ぶりに野球を再開した正吾には、「清原の長男」という肩書がつきまとった。

 「4番・一塁手」の座をつかんだこの1年は特にそうだった。1打点でも挙げれば、試合後の取材に指名される。打たなくても、ネット上に記事が出た。

 「父の存在を重圧に感じるか?」

 報道陣からよく聞かれた質問だ。あえて強い言葉を選ぶように、否定してきた。

 「父親の息子として生まれてきた以上、その使命を背負いながら生きていくことになる。そこにネガティブな要素は一切ない」

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 初めて主軸として迎えた東京六大学春季リーグ戦は打率2割6分9厘、本塁打は0。ベストナインを受賞したものの、ドラフト候補と呼ぶには物足りない成績だった。だからだろう。プロへの思いを聞かれても「今はこの1年をやりきることだけ考えている」と明言を避けていた。その態度に、彼の迷いが透けた。

 プロ志望届を出したのは9月…

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