
神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)は5日、尿管がんの治療をしていた神戸市の70代男性が投薬ミスによって2月に死亡したと発表した。肝機能が低下したことを把握していたが、その場合に使ってはならない薬剤を主治医が投与したという。
男性は昨年7月に他院の紹介で同病院を受診。ステージ4の尿管がんと診断され、11月に腹腔(ふくくう)鏡で腎尿管とリンパ節を摘出する手術を受けた。
さらに病院側は再発予防のための化学療法として、がん細胞の増殖を抑える「免疫チェックポイント阻害薬」(ニボルマブ)を12月に2回、投与した。
2回目の投薬時、主治医は男性の肝機能の状態が投薬中止の基準を超えていることに気づいたが、投薬を中止しなかったという。監査を担当する薬剤師も気づけなかった。
今年1月の血液検査で、肝機能の異常を示す顕著な数値が確認され、免疫チェックポイント阻害薬の副作用が疑われることを病院は把握した。
男性は2月には積極的な治療を断念して緩和治療に移行し、2月10日に死亡した。死因は肝不全と腎不全だった。
病院は医療安全管理会議で、12月の2回目の投薬は「本来は中止するべきだった」として主治医によるミスと判断し、死亡との因果関係も認めた。
病院側は1月以降、家族に説明と謝罪を続けているという。今後、補償についても協議する予定。3月4日には経緯について兵庫県警にも説明したという。
主治医はなぜ投薬を中止しなかったかについて、「覚えていない」という趣旨の説明をしているという。