夜のまちを照らすコンビニ
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 半世紀前の1974年5月、セブン―イレブンが日本初となる本格的なフランチャイズのコンビニエンスストアを東京・豊洲にオープンさせた。人々のくらしに欠かせないものとなったコンビニが、社会を映す現代短歌でどのように詠まれてきたのか。歌人の山田航さんに寄稿してもらった。

 コンビニエンスストアは現代日本の都市風景を象徴する店舗として、現代短歌では頻繁にモチーフとなる。コンビニが日本社会に浸透したのは1980年代。共働き世帯や単身者が激増して都市生活者のライフスタイルに合致するようになってからだが、短歌のモチーフに定着するまでにはタイムラグがあった。俵万智『サラダ記念日』(87年)はマクドナルドなど80年代の都市風俗を多く詠み込んでいるが、コンビニは詠まれていない。

 80年代にいち早くコンビニを詠み込んだ代表的な歌としては、この一首が挙げられる。

 抒情せよセブン・イレブン こんなにも機能してゐるわたくしのため

小池光『日々の思い出』(88年)

 コンビニが「抒情(じょじょう)的な空間ではない」という認識があるからこそのシニカルな歌である。

 92年には、東洋大学「現代学生百人一首」にコンビニの歌が現れているという新聞記事があり、若者文化の文脈で詠まれ始めたようだ。朝日歌壇の過去作品(95年以降)を検索すると、都市生活の舞台としてコンビニを詠む歌が目立つ。「抒情せよ」と言うまでもないほどに、シンプルな抒情性が見いだされている。

 不器用な父が買い来しコンビニの袋の中のいちご大福

長浦史恵(96年)

 小池が作ったモードの延長線…

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