本番前、ステージで練習を重ねるフジコ・ヘミングさん=聴衆1万4千人を集めた東京・日本武道館で/大友良行撮影

【2007年5月16日付神奈川県版】

 難聴による何十年もの不遇を経て、90年代に爆発的な人気を得たピアニスト、フジコ・ヘミングさん。その透きとおって力強い音色は聴く人をいやし、今も多くの人を熱中させる。横浜で6月に連続公演することになった。練習のあいまにピアノへの思いを聞いた。

 ――なぜ、フジコさんのピアノは人を引きつけるのでしょう。

 私より技術がうまいピアニストは世界にいっぱいいる。でも、そんな機械のような演奏はしたくない。たとえば、フォルテシモだからといってガーンとやるのは大間違い。ちゃんとブレーキをかけて弾かなくては。ショパンのきれいなメロディーのところは、マリア・カラス(歌手)が歌っているように弾かなくてはならない。私は音色で評価されてきたから、その音色をもっと良くしようと努力している。

 ――CDに入っているトロイメライの曲は甘く弾く人が多いですが、フジコさんの演奏は音が力強く通って新鮮ですね。

 あの曲は難しい。甘ったるくなりがちだから、いやらしくならないよう気を使って何度もやりました。

 ――不遇の時代にドイツでピアノ教師をされていました。子どもたちにどう教えましたか。

 私はほめますよ。才能は花と…

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