ステーションAiの佐橋宏隆社長=名古屋市昭和区、溝脇正撮影

 国内最大のスタートアップ(新興企業)支援拠点「ステーションAi」(名古屋市)。地域経済の柱である自動車をはじめとした製造業などとスタートアップの新技術を掛け合わせてイノベーションを生むことを狙っている。「強固なイノベーション都市をつくる条件を満たすのは東京以外では愛知しかない」と言うステーションAiの佐橋宏隆社長に話を聞いた。

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 ――ステーションAiが昨年10月末に開業しましたが、状況はどうですか。

 「良いスタートが切れています。開業当初からスタートアップが500社、(トヨタ自動車など)地元企業や大学、自治体などのパートナー企業が200社・団体参画していますが、連日入居の申し込みや施設見学の問い合わせが入っています。アジアのスタートアップの聖地をめざし、引き続き機能を高めたいです」

 ――スタートアップ支援拠点を愛知に作る意義は。

 「ここ10年ほどの間に、国内でもスタートアップが盛り上がってきましたが、まだまだ東京一極集中。強固なイノベーション都市を作るには、産業の集積や優れた研究の種を持つ大学が必要で、こうした条件を満たすのは東京以外では愛知しかないです」

 ――愛知はこれまで「スタートアップ不毛の地」とも呼ばれてきました。

 「自動車産業が好調だった時代が長かった分、『新卒で大企業に入るのが良い』というカルチャーが深く根付いてきたのではないでしょうか。アメリカでは優秀な学生は自ら起業したり、スタートアップに就職したりするのが一般的になっており、東京でもその傾向が強まりつつあります。愛知でも名古屋大学がアントレプレナーシップ(起業家精神)教育を必修化するなど、少しずつ価値観が変わり始めています。近年は、保証協会付きの融資を利用したり、株式を売って資金を調達したりと、少ないリスクで起業できる環境も整ってきました」

 ――スタートアップ支援施設は全国にありますが、ステーションAiの強みは。

 「ステーションAiは、入居するスタートアップや既存企業の数が多いことが強みです。毎日のように交流イベントを開いており、入居していない企業にも参加してもらっています。スタートアップと既存企業が接触する機会が増えることで、新たなイノベーションも生まれてきます。すでにマッチングが成立した事例も出てきており、実績を積み上げ、『スタートアップといえば愛知』というイメージを国内外に広めたいです」

     ◇

 さはし・ひろたか 三重県桑名市出身。2004年にソフトバンクBB(現ソフトバンク)入社。経営戦略や社内起業プログラムの運用などに取り組む。21年9月にステーションAiに出向し、代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)。

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