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かつての店内を書斎に使う武藤類子さん=2025年3月7日午後2時5分、福島県田村市船引町、大月規義撮影
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 東京電力福島第一原発事故の刑事責任を問い、福島原発告訴団長の武藤類子さん(71)=福島県田村市船引町=らが元会長らを業務上過失致死傷などの疑いで告訴してから約13年。東電旧経営陣の無罪が5日付の最高裁の決定で確定することになった。だが、刑事裁判で出た新たな証拠や証言は、武藤さんらが告訴した成果だった。一方、思わぬ「屈辱」も受けた。裁判を武藤さんと振り返った。

 裁判は双葉病院の入院患者ら44人を死なせたとして、勝俣恒久・元会長(享年84)と、原子力部門のトップだった武黒一郎・元副社長(78)、武藤栄・元副社長(74)が業務上過失致死傷罪で強制起訴された。争点は3人が①巨大津波が予測できたか②重大な事故を避ける対策を怠ったかだ。昨年死亡した勝俣氏は裁判が打ち切られた。

 初公判は2017年6月。3人は津波の到来は「想定外」と無罪を主張した。武藤さんも裁判所で「想定外」に見舞われた。

傍聴人に厳しい検査

 一審の東京地裁は公判のたびに、すべての傍聴人に厳しい身体検査をした。初公判の直前に、仙台地裁で被告が傍聴席の警察官を刃物で刺す事件が起きた。その影響とみられる。

 だが東電裁判で傍聴する多くは、原発事故の避難者や被害者だ。武藤さんも原発事故により、田村市の喫茶店が経営できなくなった。

 筆者も傍聴の際、検査を受けた。大きな虫眼鏡のような金属探知機で体の表面をなでられ、上着やズボンのポケットに何か入っていないか、地裁の職員に直接触られる。持ち込むノートも中に何か挟んでいないか疑われ、ページをめくらせられた。

 体を触られ「キャー!」と叫…

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